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穏やかな低い声。ふと、東雲は不思議な感覚を覚えた。
なんだ? この、懐かしい感じ…。
はっと気が付いて、東雲は思わず声を上げた。
「立花先生! …標準語だ!」
なんか落ち着くと思ったら。聞きなれた発音ってやっぱり耳に心地いい。
アウエーで仲間に会ったような嬉しさが東雲の胸に広がった。
「僕かい? うん、出身は東京だよ。大学も。…君もちょっと戸惑っただろ? ココは東京といろいろ違うから」
「ちょっとじゃなくて、かなり、すごく、めちゃくちゃ、いろいろ、戸惑いました」
しかも、現在進行形だし。
思わず力を込めて東雲は断言してしまった。眉を寄せた東雲の顔つきに、立花はさもありなん、と笑った。
「困ったことがあったら相談に乗るからね。じゃあ、気を付けて」
白衣を翻して保健室へ帰って行く立花の後ろ姿を、東雲はしばらく眺めていた。
あの先生も東京から…。知らなかった。東京出身の先生がいるなんて…。これは心強い。
今まで誰にも分かってもらえなかった、O阪の不思議の話ができそうだ。
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