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斜め後ろの佐々木が、東雲を呼び止めた。午前中、居眠りをしていたのか眠たそうな顔だ。あくびをしながら、佐々木は足元からゴソゴソと何かを取り出した。机の下には何故か小さな青いクーラーボックスが置いてあった。
「これ、もっていけや」
白いパックを差し出しされて、東雲は目を瞬いた。
え? 何? これ…刺身?
キレイに並んだ、10切れはあるマグロの刺身だ。
「な、何で?」
面食らった東雲に、佐々木は目を糸にして笑った。
「こないだ、数学の答え教えてくれたお礼や」
いや、なんでマグロの刺身が弁当なんだ!
代わりに西門がひょいと受け取って、ありがと~と歩き始めた。
「あのさ…。刺身がお弁当ってアリなのか?」
東雲が問うと、西門はもちろんや、と頷いた。
「アイツ、よう持って来てるで。家が魚屋なんかもな~」
ああ、そういうことなら分からないでもないか…。けど…夏だし…。
廊下を連れ立って歩いて学食に向かう。
「お母さんの調子どう?」
「元気やで。けど、右手がなかなか上手いコト使われへんみたいや。アタシの華麗なハサミさばきが~!ってやかましいわ」
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