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「マグロ、もうてええ?」
「あ、もちろんだよ。こんなに食べられないし…」
確かに東雲のスプーンはあまり動かない。ホクホクとトレイのパックを剥ぎ、美味しそうにマグロの刺身を頬張る西門とは対照的だ。
「食えへんの?」
「え? いや…」
「カレーはぬくぬくのうちがうまいんやで」
ぬくぬく…? 暖かいってことかな。じゃあ、冷たいのは冷え冷え? ぬるいのは…ぬるぬる? 石鹸かジェルみたいだけど…。
ここのところ、クイズにどっぷりはまっている東雲は一瞬でそんなことを考えた。
「あ、うん。なんか、食欲無くて」
それは本当だ。いろいろ忙しいことが一因でもある。
「そらあかんやん! うちにたこ焼き食いに来るか? オカンも家おったら暇なんか、うるそーてかなわんわ。東雲来てくれたら絶対喜ぶで~」
米粒を飛ばしながら口走った西門の声を、東雲はやんわりとさえぎった。
ありがたいけど、今はクイバトに集中しないと。これも君のためだ。わかってくれよな、西門。
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