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クイバト! と黒で大きく書かれた黄色いTシャツを着たスタッフたちが校舎のベランダからメガホンで人波を誘導している。
「入場証、出しとこ」
仙頭がスマホを出して空いている列に並ぶ。アルバイトらしい若い女の子がハンコのようなものを押し付けると、スマホの入場と書かれた画面に赤い印が浮かんだ。
「おお~! おもろいな、これ」
ほんと。よくできているな~。保存しとこ。記念になるもんな。
「アプリは?」
「もちろん入れてんで! コレないと参加でけへんし」
用意万端だ。校庭に向かって歩いていた岡本が不意に足を止めた。
「東雲、あれあれ」
顎をしゃくって示す方向に視線を投げる。人混みの向うの木の陰で話し込んでいるのはDVDで見た連中だ。太った大柄な生徒がひとりと小柄なふたりの男子ばかりのチームだ。
あ、去年の関西代表だ。ふ~ん。あんまり…。
「あんま、賢コそうには見えへんけどな~」
さらりと口にして仙頭も斜めに眺めている。
同じ感想だけどさ。油断大敵だよな。
「人は見かけじゃないってことだね」
「うん、特に、あのぽっちゃりは要注意やで」
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