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自分たち3人が校庭を走って行く後ろ姿はドローンの映像だろうか。遠くから撮っている。岡本が抱えているのは9個のゆで卵の入ったボール。
その前には関教の女の子。足をつまずかせ前に転びかける。抜きかかっていた東雲が慌てて腕を伸ばして支える。
二の腕を掴まれた彼女の身体が勢いを削がれ、その場にストンと座り込んだ。そのシーンがまるでスローモーションのように流れていく。銀の眼鏡を直しながら屈みこんだ東雲が、彼女に大丈夫?と問うているのが唇の動きで分かる。浮かべた軽い笑み。
うわあ! どアップ! 何だこれ、望遠か?!
東雲はゲホゲホ咳き込みながら後ろにひっくり返った。
『あらぁ。紳士的なイケメン君ですね~! 素敵!』
スタジオでは売れっ子の若い女優が頬に手を当ててはしゃいだ。その後には飴を両手一杯に盛った彼女とそれを取りまいて笑う自分たち3人のシーンまでが流れる。
『甘酸っぱい青春ですね~!』
『そうなんです。彼はこれで“王子”のあだ名を貰いましてね』
「王子ですか!」
『ええ、クイズ王子』
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