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顔を歪めて仙頭の手を借りて起き上がる。会場からも声援が上がる。しかし、無常にも鳴るホイッスル。汗に濡れた顔を歪めて、思わず膝をついた自分の姿。絶望的な表情。
なんでこんなトコ撮るんだよ! あ~、あの時、ホント、泣きそうだったな…。足もどこも痛かったし…。
『あ~。王子敗退ですか?!』
『いやいや、見ててください! こっからが本番ですから』
Mアナの問いかけに担当アナはニヤッと意味深に笑った。敗者復活戦~!と画面の中で絶叫する姿。あの時の、おお~と割れるような歓声が蘇る。そこまでで、一旦他の地区予選の映像に切り替わった。
「すっかり、王子が定着してるやん」
「嬉しくない」
きっぱりと言い切った東雲。
「まあまあ、東雲。そんな不機嫌な顔すんなや。楽しんでいこ」
岡本が子どもをなだめる様に東雲の頭を撫でた。
まあね。その通りだ。
東雲は苦笑しながらその手をやんわりと振り払った。
「うわ~~! 東雲! イケるか~!」
テレビ画面の両端を掴んで絶叫した西門に、見えんやろ~! とブーイングが四方から飛ぶ。
「せやかて、東雲コケたで!」
「これ、録画やから」
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