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低い音を立ててバウンドしたボール。今度は西門の右手にボールが吸い込まれていく。
ダン! 床を踏みこんだ力強い音。西門の姿が一瞬沈んだ。が、次の瞬間、その背が跳んだ。
真っすぐに上に。すぐ横で見上げた東雲の視界の中。遥かかなたに見えていたリングに吸い込まれていくボール。ネットを揺らす西門の伸びた腕。
まるで、スローモーション。
うわあ…。すごい…!。すごいや…! なんて高くて速いんだ…。
東雲は思わず息を吐いた。感嘆の息だ。空に向かって高く飛んだ西門。ダン、と両足で着地して床を揺らした。チャイムが鳴る。
「休憩~!」
二時間続きの体育の授業はまだ続く。力加減を知らない年頃だ。その場で倒れ込んだり、壁にもたれ掛かってゼイゼイと息を整えている。東雲は西門の姿を探した。
あれ? いない…。さっきまで側にいたのに…。
喉がカラカラだった。
ここの水道って飲めるのかな…。冷水器はどこだっけ。グラウンドに続く渡り廊下を眺める。
うわ! 冷たいっ! ヒヤリと何かが首に触れて東雲は飛び上がった。
「うわ! びっくりした!」
慌てて首を押さえて振り返った東雲に、ケラケラと笑い声が降ってくる。思った場所のもっと上に、西門の顔があった。西門は手に持ったスポーツ飲料を軽く振った。
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