第1話 東京's転校生 in O阪'sど真ん中

4/15
前へ
/344ページ
次へ
「あ、でも、ありがとう」  せっかく誘ってくれたんだからここは礼を言っとかないと…。最初が肝心だし。  淡く笑って社交辞令を付け加えるのは忘れない。 「…自分、やっぱ別嬪やわ」  西門は目の前の茶色の瞳をまじまじと見つめた。 「な、昼メシ一緒に食べへん?」  「え? あ? ありが…とう」  きっと転校生のこと心配してくれてるんだな。それにしても距離が近いな…。そんなにじっと見られても…。  東雲は妙な迫力に押されて少々上半身を引いた。 「じゃ…あ、学食の場所を教えてくれる?」 「OK、OK、OK牧場! 任しとき!」  ずいっとさらに西門が身を乗り出した。  え? OK…牧場? 何それ。東雲は目を瞬いた。もちろん、大昔のギャグなど彼が知るはずもない。 「日替わりスペシャルランチ、言うんがあってな。4時限のチャイム鳴り終わってから行ったらもう遅いねん。ほやから…」  自慢げに語る西門は教室のドアを指さした。 「ええか? わいが合図したらガーッて後ろ走ってついてきいや、自分」  え? ええ? やっぱり、自分って俺のことだよな? それに、場所教えてくれるだけでいいんだけど。遠いのかな? それとも牧場になにか関係が…?  そんな東雲の心の声は当然聞こえない。
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加