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「あ、でも、ありがとう」
せっかく誘ってくれたんだからここは礼を言っとかないと…。最初が肝心だし。
淡く笑って社交辞令を付け加えるのは忘れない。
「…自分、やっぱ別嬪やわ」
西門は目の前の茶色の瞳をまじまじと見つめた。
「な、昼メシ一緒に食べへん?」
「え? あ? ありが…とう」
きっと転校生のこと心配してくれてるんだな。それにしても距離が近いな…。そんなにじっと見られても…。
東雲は妙な迫力に押されて少々上半身を引いた。
「じゃ…あ、学食の場所を教えてくれる?」
「OK、OK、OK牧場! 任しとき!」
ずいっとさらに西門が身を乗り出した。
え? OK…牧場? 何それ。東雲は目を瞬いた。もちろん、大昔のギャグなど彼が知るはずもない。
「日替わりスペシャルランチ、言うんがあってな。4時限のチャイム鳴り終わってから行ったらもう遅いねん。ほやから…」
自慢げに語る西門は教室のドアを指さした。
「ええか? わいが合図したらガーッて後ろ走ってついてきいや、自分」
え? ええ? やっぱり、自分って俺のことだよな? それに、場所教えてくれるだけでいいんだけど。遠いのかな? それとも牧場になにか関係が…?
そんな東雲の心の声は当然聞こえない。
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