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「合計やなくて…教科別なら負けへんで!…数学で、どや!」
「おおーー!! 勝負、かけてきたで!」
やじ馬たちの歓声が上がる。物見高いクラスの連中も集まってきた。
「数学って…今回のテストの?」
「せや!」
トレーナーよろしく斜め前に腕組みをして立った西門が、少々屈んで東雲に問うた。東雲の目に負けん気が覗く。
「どや? 東雲。受けて立つか?」
だが、東雲は首を振った。
「意味ないよ。止めとく」
「何でや」
不思議そうな西門の声。東雲は静かに答えた。
「勝負にならないよ」
「ははは~! 逃げるんやな」
仙頭の笑い声とやじ馬のざわめき。その中で、東雲はカバンの中から綺麗にファイルした答案用紙を取り出すと西門に差し出した。それを覗き込んだ西門が、わざとらしい大声で叫んだ。
「なんや! ままま…満点やんけ! ほら、どんなん持って来たかて勝負になれへんわな~」
おおおーーーー! あのテストでかーー!と、教室が大きくどよめいた。
「なんやて!」
歯ぎしりしそうな仙頭の声と、もうひとつ、一際大きな他の声が重なった。
「チャイム鳴ってんぞ!!! お前ら!! さっさと席につかんかーーー!!」
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