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数人と話しながら、机の横に下がった網に入ったサッカーボールを蹴っている、斜め前の席の生徒。
「あの…。物理室ってどのへんかな?」
周りの生徒たちも東雲を振り返った。
「物理室いうたら、ここ出て右にガーッと曲がってドーンと突き当りをさらに左にダーッと行った角や」
手を勢いよく伸ばし、角度を変えながら説明してくれる。
「……」
なんか…擬音、多くないか? そんなに勢いよく歩かないけど…。
右左…と繰り返す東雲。相手は肩に教科書を持ち上げて笑った。短い焼けた茶髪の毛先があっちこっち向いている。笑うと目が細くなってちょっとキツネみたいで、いたずらっ子のような顔つき。背は東雲と同じくらいだ。
「一緒に行こぉや。俺、井藤や」
「あ、ありがとう…」
確か…サメパンツ男子だ。サッカー部員なのかな。失礼な覚え方をしていた東雲だったが、好意に甘えることにした。
「ええって。今日の英語で俺が当てられたら助けてな~」
すかさず頼まれる。
「あ、うん、俺で解ったら」
「東雲が解らんかったら俺らみなアウトやで」
後ろからも笑い声が響いた。
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