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後ろから横に並んだのは坊主頭の阿部だ。確か野球部のユニフォームを着ているところをグラウンドで見かけたことがある。ニキビ面が焼けて真っ黒だ。
「早よ、行こ、行こ!」
「確か、野球部だよね?」
「せや! 俺ショートやで」
阿部はちょっと得意そうに人差し指で鼻の下を擦った。
ショート…。よく分からないけど、この感じじゃ、きっといいポジションなんだな。
東雲は知らないなりに、ほお~っと感心して見せた。
「東雲は野球好きか? やっぱ、巨〇ファンかいな」
いや、都民が皆、〇人ファンって限らないって。大体、野球のことよく知らないし…。
「それともヤクル〇?」
いや、そこは突っ込まないでくれ。
東雲は適当に笑ってごまかした。
わらわらと東雲の周りに人が集まり、塊になって物理教室に向かう。美形で秀才、おまけに東京出身の東雲に興味があるのは西門だけではないらしい。勉強が会話の糸口になると思ったのか、やたら振られるのは宿題やら授業のことだ。
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