17人が本棚に入れています
本棚に追加
/220ページ
そんな中で、西門だけが、意地になって彼に話しかけようとしなかった。休み時間はどこか遠くの席に移って、チラチラと東雲と周りの連中を眺めている。気になって仕方ないのが見え見えだ。
授業中、彼に向けられた広い背。視界を覆うツンツン毛の頭。
西門って、案外意地っ張りだよな。…別にいいけど。しつこくされなくて快適だよ。
「…邪魔だな…」
黒板が見え辛くて、つい不愉快そうな声で呟く。
もちろん返事はない。時折、すっきりと視界が晴れるときがあった。そんな時は、前に突っ伏した背が気持ちよさそうに上下していた。
寝てていいのか? ココ、大事な数式だぞ。後で頼んできても教えてやらないぞ。いや、それより先に…。先生が…近寄ってきた!
「西門! 起きんかー!」
例によって、数学ⅡBの橋本だ。耳にびりびり響く怒鳴り声。
「うわあ!」
途端、跳ね起きた西門は寝ぼけた目で辺りを見回して頭をかいた。
「センセー。心臓止まるがな。もっと優しーに起こしてーな」
最初のコメントを投稿しよう!