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「何言うとんねん。お前の心臓なんか、ボーボーに毛が生えてるやろが」
どっと教室中が笑い声をあげた。
やっぱり…。ん? 俺、何を心配してるんだろ。
「ボーボーちゃうなら針金か?」
「それはセンセやろ~。わいは蚤の心臓やで~」
いつものように漫才じみたやり取りを聞きながら、東雲は戸惑うように目を逸らした。
その日の放課後、帰ろうとして東雲は学内の道を間違えた。
「…俺って、方向音痴なわけ?」
自分に呆れながら辺りを見渡す。すぐに位置の手がかりは見つかった。
ボールの音がする…。ここ、体育館の裏手だ。開いたドアから覗き込む。
やっぱり、バスケ部の連中だ。あ、栗栖に…西門も。
もちろん、皆より飛びぬけて背の高い西門の姿はすぐに分かった。ちょっと気まずくて、東雲はドアの陰に隠れてその姿を眺めていた。
西門の体つきって、俺とずいぶん違うな…。
緩いユニフォームから覗く、厚い胸板と肩がたくましい。男らしい骨格と滑らかな筋肉を持つ西門。ダン、と床を踏む音。
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