第1話 東京's転校生 in O阪'sど真ん中

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「え…。学習院とか…。あ、池袋が近いよ。あの…ありがとう。もう前向いてくれて大丈夫だから」  だから、ちょっと距離が近すぎるって…。  一応、遠慮しながら水を向けてみる。 「ふ~ん、池袋の近くか~。よう分からんけど、芸能人とか結構、会うん?」  前を向く様子はまったくない。 「あんまり…興味ないから…。あのっ、前向いてくれる?」  思い切って東雲は指を前に差して強い口調で言った。  これくらいはっきり言えば通じるよね。 「お、そやな」  が、西門は口でそう言いながらも全然動かない。 「な、自分、ちょっと()ろてみ~や」  え? いやいやいや、おかしくもないのに笑えないだろ。何言ってんの? 「こら~! 西門! 前向け!」  いきなり響いた怒鳴り声。中年の教師はチョークを投げるそぶりで西門を指さした。  うわ。ほら! 怒られた!  思わず首を竦めた東雲。なのに本人はのんびりとした動きで教壇の方に身を捻った。 「あら、当たってもたがな。何なん? 橋本(はしもと)センセ」 「何なん、ちゃうわ! 聞いとんのかいな。問3、やってみぃ」  橋本はちょっと小太りで天然パーマのいかつい四角い顔をした教師だ。いらついたのか、せわしなく指で黒板を叩く。 「はいな」  悪びれず西門は立ち上がった。そして黒板に向う。東雲はその後ろ姿に目を見開いた。  うわあ、デカい…。すごい背が高いんだな、西門って。190ぐらいかな…。足も大きいなあ。あのバッシュ、サイズはいくつぐらいなんだろう。  黒板まで大またで数歩。西門が乗ると木の教壇がミシと音を立てた。
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