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「…なんや」
うわ、わいの声、感じ悪ぅ…。いかんいかん!
口から出た不機嫌な声に、本人が一番びっくりした。
けれど、聞く気はある。後ろの机に深くもたれかかるような体制で、ツンツン頭がずいっと東雲の方へ乗り出した。それに促されたのか、東雲の囁き声が続いた。
「…この間はゴメン」
西門は目を瞬いた。
お、案外、素直やな。えーと、何て言うたらええかな。もう、怒ってへんで、でええんかな…。なんのこと~? がええかな。それとも…OKOKOK牧場にしよっか?
西門がうろうろと考えてる間に、東雲は口走った。
「…俺…進学のことで…頭が一杯で…。やっぱり東京の大学に…って…」
少々俯いての、二人だけにしか聞こえないような小さな声。
「ふうん。東京ってそないええん?」
そら、しゃーないわな。いや、気ィ悪うしてないで、ホンマ。そら、暮らしてたトコはええやろー。わいやってそうや。ここが一番好きやもん。
なのに、息だけの返答は機嫌が悪そうに聞こえた。少々焦った東雲の声。
「…家族が離れ離れだから…」
「家族が?」
「俺、父さんの転勤についてこっちへきたけど…。弟と母は東京に残ってて…」
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