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数学の三角関数の問題を前に、西門は首を振って肩を竦めた。
「あかん、わからん。わからんわ~、先生。サイン、コサイン、タンジェント。わいの頭はカラやねん♪」
節をつけて唸った声に、どっと教室に笑い声が上がった。西門は橋本に教科書で叩かれそうになってすんでのところでかわした。
「センセー、そこはやっぱツッコミ入れな!」
西門にそう振られ、一瞬沈黙が走った。と、思ったら橋本は両手で自分より高い西門の頭をガシッと掴んで軽く揺さぶった。
え? 何やってんだ、先生?
東雲は目を瞬いた。教室中が、おおっとざわめき、成り行きを見守っている。ぐーーっと皆の意識がひきつけられた瞬間。
「なんでやねーん!」
どどっと笑い声が上がった。
「ええコンビやなーー!」
「ホンマ、ホンマ!」
西門が振り返って、皆に親指を立ててみせた。
「…」
爆笑の中、ニコニコしながら席に戻って来た西門は東雲に向けてピースサインをする。
ピースって…。ちょっとついていけそうにないノリ…。こういうの、O阪って感じ…。
東雲は目を丸くしたままだ。
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