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「うまいん食わしたれや。ところで、授業中なんは知ってるか?」
古文の教科書で西門の頭を軽く叩く。
「仲良く廊下で立っとるか~、二人」
「え? 今時? 古風だな~」
東雲が感心したように小さく呟く。
いや、そ~いう問題ちゃうで。東雲はどっかズレてておもろいなあ。こんな風にかわすんや。
「センセ~。廊下は寂しーから遠慮しとくわ」
愛嬌たっぷりの笑顔で教師に笑いかける。クラス中がどっと明るく笑った。西門は後ろ向きのまま、東雲に親指を立てて見せた。
「しゃ~ないやっちゃな、とにかく、たこパの計画は休み時間にせい。東雲、7ページ頭からな」
「はい」
教科書で指されて、東雲は立ち上がった。
「人生得レ意須レ尽レ歓…」
すごいな~。東雲は。こんな、呪文みたいな文が読めるやなんて。よっしゃ。さっそくオカンに連絡して、用意頼んどこか…。
西門には意味不明の漢文を淀みなく読むと、東雲は腰を下ろした。屈んだ時に西門の耳元に小さな声が届く。
「ありがとう」
東雲はにこっと微笑んだ。
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