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「言わんでええがな、そんなん」
こんなん、当たり前やん。ツレなんやから。でも、東雲のうれしそうに笑ろた顔、可愛いいな! なんやろ、この辺りホンワカ温っかいやん。
ちょっと顔を赤くした西門が胸の辺りを撫でた。
昼休みの終わり、席替えをすると西門と東雲は遠く離れた。西門は少し後ろへ、東雲は反対側の廊下ぎわだ。
「あ~。残念やなぁ、東雲。まあええわ。また来月な!」
ほら、近い方がええけど。けど、席が遠かったってツレなんは変われへんもんな。
西門は机の中に詰め込んでいた教科書やノートや弁当箱を抱えて窓際の後ろの方へ移った。机の上にそれを積んでから、西門はぐるっと辺りを見回した。
東雲はと…。今度の前の席は佐々木か。あいつもええやっちゃ。しかし、東雲も律義やな~。周りの連中にちゃんと挨拶して。引っ越しやないねんから…。
「よろしく」
東雲は前の生徒に声をかけた。
「お、よろしくな~。俺、佐々木や」
前の席は細い垂れ目の、ちょっと華奢な生徒だ。やっぱり振り返って話しかける。制服のシャツの上に、空色のジャージを引っ掛けている。陸上部、と白い字が胸と背中に貼ってあった。
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