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今では何だか遠くて懐かしく感じる。SNSや電話はしているものの、やはり家族が離れてしまった変化は大きい。
ピコン!
携帯電話が小さな音を立てて東雲に知らせた。
あ、そろそろ、西門の部活が終わる時間だ…。
東雲は図書室を出て校舎の入口に向かった。もう辺りは薄暗くなっている。4月になっても、さすがに夜は肌寒い。校舎の入口の側に立つ数本の大きな木の下が待ち合わせ場所だ。
でっかい木だな…。歴史がある学校だったっけ、ココ。枝からは黄緑色の新芽が大きく育ち始めている。
「おお~い! 東雲~!」
そこへ西門が大声で叫びながら駆けてきた。大股で飛ぶようだ。
「待たせても〜たな東雲。ゴメンやで!」
「いや、そんなことないよ。本、読んでたし…」
「へ~。さっすが、学年一やな~。わい、今日は何やそわそわして…顧問の太田に怒鳴られっぱなしやったわ」
あははは~! と豪快に笑って西門はその場で何度も跳ねた。
とりあえず2人して駅に向かう。お互い電車通学で、聞くと同じ線だった。ただ、方向が逆だ。朝練のある西門とは時間がずれるから、駅でも会うことはなかった。
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