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駅前商店街は明るくて人通りが多かった。狭い道の両側に、雑然とした店舗が並びたくさんの人が行きかう。自転車も多い。ホルモン焼きの赤い提灯がそこここで揺れるのを珍しそうに東雲は目で追った。不思議な匂いも辺りに漂っている。
道路にはみ出た野菜の箱やトロ箱を避けながら西門は進んでいく。
「東雲は、たこ焼き好きか?」
聞かれた彼はちょっと首を傾げた。
好きも嫌いも、そんなに食べたことがないし…。子どもの頃、お祭りのときに、買ってもらったような…。
「好き…だと思う。あ、たこパってたこ焼き買うのなら、お金を出すけど…」
「金ー?! 何言うてんねん。そんなんいらんて。晩ご飯やねんから」
笑いながら、ばんばんと西門は東雲の背中を勢いよく叩いた。細い東雲が思わず前のめりになるほど。
「そ、そっか、ありがと。…どこでたこ焼きを買うの?」
「だから、買うんちゃうで。作んねんて!」
西門は呆れたように東雲の顔を覗き込んだ。
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