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「たこ焼きソースで食うんや」
甘いソースと卵の香りと香ばしい焼きそばの匂いに、東雲の喉がごくりと鳴った。一口頬張って、東雲は思わず叫んでしまった。
「うわ! これもおいしい~!」
自分の手柄のように、井藤が親指を立てて突き出して見せた。
「そやろ! 東雲は食いモンには素直でええわ!」
ちょっとピリッとした辛めのソースに、ほどよい歯ごたえのキャベツ。ところどころカリッと焦げたソバに絡む、とろりとこくのある卵の甘味。
たこ焼きにお好み焼きに焼きそばに…O阪って、小麦粉の美味しいものが多いんだな~。
「たこ焼きのネギは、細い青いみじん切りが旨いんやで」
隣の席でたこ焼きの鉄板にネギを散らしているのは、黒縁メガネにちょっと困ったように眉尻の下がった生徒だ。顔と髪型はなんとなくナスに似ている。
「へえ。ネギにもこだわりがあるんだね~」
「そりゃそや。O阪は食い倒れの街やからな。そや、東雲。今度、バスケの試合あるから見に来ぇへんか? 俺、宇野や。西門と同じバスケ部で、栗栖と一緒のC組や」
振り返った宇野の眼鏡が鉄板からの湯気で曇っている。
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