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ちょっと視線を投げた東雲がまた目を瞬いた。二台ある冷蔵庫の扉にずらりと並んだ牛乳パック。
「あんたらが来んねんから、ようけ買うてんで。遠慮せんとき」
いやいや、遠慮してないだろ、すでに。
ヒョウ柄母さんの声を聞きながら、東雲はもんじゃ焼きになりつつあるタコ焼きと格闘し、牛乳パックを回し飲みする連中を眺めた。
「なんでそんなに牛乳が好きなんだ?」
思わず東雲は口走った。彼は給食の牛乳が嫌いでこっそり他の子にあげていた口だ。
「なんでって、背高こうにするためやんか。NBAの連中なんか2メートルある奴もおるからな~」
タオルを頭に巻いた西門が、隣でたこ焼きをくるくる回しながら口走った。
ああ、なるほど。だけど、パックごとって…。
あらゆることでスケールがずれている。何度もバンバンと乱暴に開け閉めされる冷蔵庫が気の毒な気がした。東雲は回ってきた牛乳パックを愛想笑いでやり過ごした。
やがて9時が近づくと、西門が少々慌てて腰を上げた。
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