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「東雲、送ってくで。駅までの道、覚えてないやろ?」
確かにさっぱり覚えてない。迷路みたいだったもの。そう正直には言いにくい。
「皆は近所やから、勝手に帰るからほっといても大丈夫や」
「なるほど…」
まだ騒いでいる連中が、また明日な~と手を振った。東雲はヒョウ柄母さんに礼を言って、ありがたく西門に送ってもらうことにした。
今度は西門が自転車を引きながら駅に向かった。家を出て二人して歩くと、少し肌寒い風が吹く。
「寒ないか?」
「熱かったからちょうどいいよ」
熱気で汗ばんでいたせいか、東雲の頬が少し赤い。
思ったより人通りは多い。商店街をまた帰っていく。もう閉まった店が多いがホルモン焼きのちょうちんは未だ明るく揺れている。それを眺めながら歩いていた東雲が問うた。
「なあ、ホルモン焼きって何?」
自転車を引きながら西門はちょっとびっくりした顔をした。
「え? ホルモン焼き知らんのんか? 串刺しの肉。アレ、内臓やったかな~? とにかく串刺しのヤツや」
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