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それを見て、あたしは鼻で笑って言ったのだった。
「自分で考えれば?」
最終的に、画用紙のすみっこのすみっこに、ほんのちょっぴり絵を描くだけ許してやった。その時の亜美子の情けない顔といったら。実に溜飲が下がったというものである。
しかもマンガクラブに来て一緒に絵を描くたびに酷評されるので、しまいには彼女は班活動に参加したいと言い出さなくなった。これで、堂々とあたし達三人だけで、平和にイラストを描けるというものだ。
「これで、あいつの存在抹消完了ー」
「ほんとにね、やっと平和になったわ」
「そうそう」
あたし達はくすくすと笑ったのだった。そして。
「発表しまぁす!あたしたち、まんがクラブでーす!」
当日。あたし達は三人だけで舞台に上がった。
発表のメンバー表に、あいつの名前さえ書かなかった。最終的には亜美子が画用紙の隅に描いた小さな小さなイラストも、ホワイトで綺麗に塗りつぶしたのだった。
舞台の上から見た亜美子の姿が忘れられない。体育座りで、ずっと嗚咽を漏らしていた姿がなんとも小気味よいものだったから。
そして、発表会の後。あたしのところに亜美子がやってきて、こう言ったのである。
「ヨウコちゃん。どうして、あたしの絵、あたしの名前……消したの?なんで、一緒に発表させてくれなかったの?」
「はあ?」
まだそんなことを訊くのか。あたしは呆れてものも言えなかった。
三月。もう五年生のクラスも終わりが近い。もはや、隠す必要も誤魔化す必要もあるまい。だからはっきり言ったのだった。
「あんたがうざかったからよ。決まってんじゃん」
「うざかったら、私を消してもいいの?」
「当たり前でしょ!視界に入るだけで不愉快なんだから。そういう真似ばっかするあんたが悪いんだから!」
はっきり言ってやった。すると。
「……そう」
泣き濡れた頬。真っ赤になった目。子供っぽい汚い泣き顔とは裏腹に――彼女はやけに低い声であたしに告げたのである。
「だったら、もういいよね。……私があなたを消す理由には、それで充分なんだから。あなたもその苦しみ、思い知ればいいよ」
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