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いなかったことに。
どこにでもいる、というものだ――極端に空気が読めないやつは。人の好みや意見に合わせる気がないくせに、自分の主張だけはやたら激しい構ってちゃんなやつが。
クラスに一人はいるそういうタイプが、あたしは昔から大嫌いだった。
例えばこんなかんじ。小学校五年生になると、林間学校というお泊り合宿がある。クラスでそのための班を決める時、誰だって仲の良い人と一緒になりたいと思うものだろう。ところがそういうタイプの人間は、みんなが“好きな人同士で組もう”と話がまとまりかけたところで、余計な挙手をして意見を言うのだ。
『すみません。あのやっぱり、先生に決めてもらうか、くじ引きで決めてほしいです』
まったく、本当に空気が読めないったらありゃしない。
確かにそういうことを言いだす奴は、クラスで孤立していたり、友達が極端に少ないタイプだろう。好きな人同士で組まれたら自分が余って惨めな思いをするのが嫌なのだ。だから他の人も巻き込んで、班決めを先生に委ねようとする。
冗談じゃない、とそれを聞いて思ったのはあたしだけではあるまい。特に実際そんなことが起きた日にゃ、あたしは仲良しのアヤちゃんたちと顔を見合わせて盛大なため息をついていたのだから。
だってくじ引きでなんて決められたら、クラスの大嫌いな奴とか、大して親しくない奴と組まされるかもしれないではないか。気心が知れた友達と離れ離れになってしまう可能性が高い。そんなこと絶対にごめんだ。
『でも、みんな仲の良い人同士で組みたいって言っているし。多数決だから、みんなの意見を尊重してあげてね』
『でも……』
『ね、みんながそうしたいって言ってるんだから』
幸い、先生はあたし達の味方だった。ただ一人だけくじ引きを提案した女子の意見をなかったことにしてくれたのである。先生は空気が読めるから、あたしは大好きだ。
そもそも、くじ引きなんかしたら、その空気読めない発言をした女とあたしが同じ班になってしまうかもしれない。そんなの絶対耐えられない。楽しい林間学校がパーになってしまう。
――あいつマジ、自分が嫌われてるって気づいてないわけ?
あたしはイライラとそいつを見たのだった。
そうその女子こそ、クラスに一人はいる“面倒くさい生徒”。人に合わせる気皆無な邪魔者、亜美子だったのである。
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