サエとキヨヒロの出会い2

1/1
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ

サエとキヨヒロの出会い2

「そこからヒロとどんどん仲良くなっていったかな~話も合ったしね」 「そうなんですね」 「ヒロはね、哲学が好きだったんだよ」 「へえ。兄が哲学ですか。僕あまり哲学はわからなくて。難しそうです」 「うん。私も好きだけど、好きってだけで本当の理解は全然できてないと思う」 「人によって解釈分かれそうで」 「ね。ただ、人の心を知れる一番違い学問とは思ってる」 「……」 「って、ヒロが言ってたの」 「えっそうなんですか」 「うん。人の心……って複雑じゃない?ヒロは人間の内側っていうのかな?そういうの興味あったみたい。愛情とか、感情とか、そういうの」 「心理学ではなくて、哲学にいったんですね」 「うん。心理学だって人の心学べると思うんだけどね。でもヒロは哲学を選んだんだよね」 「へえ」 「もう十分知ってそうだったけど。10代なのに大人びてて。私にとってはヒロは落ち着いたお兄さんって印象だった。出会ったときからずっと。あっ、でも子供みたくはしゃぐこともあったよ」 サエはふふふっと笑って続けて話す。 「いろんなことにすぐ気づくし、全然怒らないし、私の話を……目を見て最後まで聞いてくれるし。なのに小さなことで子供みたくすぐ笑うところもあって。何この人って思って、それでどんどん惹かれてったな」 ハルは、サエの話を聞いていて少し照れ臭くなった。 「なんだか聞いててこそばゆいというか」 「あはは!そうだよね。話を聞いてくれるの、すごく嬉しかった。私の意味わからない例えとか、些細なことまでいつもちゃんと聞いてくれたの。……あ、これはやばい。ちょっとうるっときちゃうね」 そういってサエは水を勢いよく飲み込み、小さく深呼吸をして、ハルの目を見て言う。 「それに君のお兄さんは、なんていうのかな。海みたいな人だったのだよ。ほわほわ~とした、あったかい海みたいな」 「海……ですか」 「うん、隣にいると安心する。ぷかぷか浮いてるみたいな。あはは、例えが変だね」 「あ、でも、隣にいると安心するっては少しわかる気がします。僕が子供の頃兄はいつも隣にいてくれて、守ってくれてたから」 「そっか。大人びてたのは、愛する弟君がいたからなのだね」 「あはは、愛するって、なんだか重いです」 「ははっ。そうだね」 サエがふふっと優しい表情で笑い、窓の外をちらっと見る。 ハルがタカについて聞く。 「タカさんとは、いつ会ったんですか?」 「あっタカ君はね、ヒロと仲良くなりはじめてすぐの頃だったかな?」 「どんな印象だったんですか?」 「うーん……好青年!かなあ。ヒロみたいに優しい青年って感じだったよ」 「へえ」 「タカ君との出会いも、よく覚えてるよ」 そう言ってサエはタカとの出会いについて話しはじめた。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!