感情は、本気で厄介だな

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感情は、本気で厄介だな

「もうこんな時間ですね。ハルさん時間は大丈夫ですか?というか、酔いは大丈夫です?お水、飲みます?」 タカがスマホを見て言った。 「え、あ……あ、大丈夫です!酔ってません。今日はこのへんで帰ります」 ハルは、タカの先ほどの反応が気がかりで、ほろ酔いどころではなかった。 遅い時間になれば、泊まっていかないか、なんて聞かれるのではと淡い期待をしていたが、そんな状況には到底ならない雰囲気をタカから感じていた。 ハルが玄関のドアに手をかけ、後ろを振り向く。 「あの、タカさん。大丈夫ですか?」 「え?ああ、大丈夫ですよ。あまり酔っ払うことはないので」 タカは自分の首を触りながら、いつも通りの笑顔で言った。 ハルは、そっちの意味じゃなくて、と言おうとしたが、やめておいた。 「よかったです。じゃあ今日は……ありがとうございました」 「いえ、こちらこそありがとうございました。いろいろ買ってきてくれて。じゃあ、また連絡しますね」 タカのマンションを出て駅に向かう途中、ハルはタカと通じ合えなかったこと、そしてタカの反応のことを考えていた。 ただでさえタカに微笑まれるだけでもドキっとしてしまうのに、本調子じゃないそぶりを見せられたら気になって酔いなんてどこかに吹っ飛ぶ。 人間なのだから感覚が鈍ることだってあるだろう。そういう日だってあるだろう。もしかして自分に協力しすぎて体調が悪くなったのか。いや、でもそんなそぶりは見せていなかった。第一、呼吸も荒れていなかった。 タカの態度を一つひとつ思い出しては、頭の中で自問自答を繰り返す。 冷静に考えたらたまたまと思える出来事も、ハルにとってそれがタカに関係するとなれば大きな気がかりに変わる。 以前に感じた、嫌な予感にも通じる気がしていた。 そんな心配をする反面、タカへの淡い期待感が感情を更にややこしくする。 タカに好きだと告白して、ひと段落つくまでは変なこと言わないと言ったにも関わらず、会うたびに何かしら期待してしまう。 また寝顔が見たい、背伸びをする姿を横で眺めたい、そんなことをタカの家で何度も考えた。 心配になるし、気になるし、自分の欲求も暴走する。 「あー、はあ。感情って本気で厄介だな」 小さな声で、そう呟いた。 駅からタカのマンションへ向かったときの感情と、駅へと向かってるいまの感情の差に、ハルはおかしくなり鼻でふっと笑った。 あっという間に駅に到着し、タカのマンションの方角をちらっと見てから改札に入った。
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