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「う……。ここは、どこだ?」
目を覚まして上体を起こす。飛び込んできた景色は、どこまでも広がる海だった。
座ったまま自身の足の方へ目線をやると、いつも身に着けている学校指定のスラックスだ。ビショビショに濡れて、いつもよりも濃いグレーになっている。それに、砂まみれだ。
さきほどから何度も波が寄せてきていて、スラックスに新しい染みを作り続けている。とりあえず、移動しないといけないようだ。立ち上がって、後ろを振り返った。こちらのほうは林みたいになっているらしい。
立ち上がってみて気がついたが、体のいたる所に痛みがあるし、紺色のブレザーは擦り傷だらけだ。
砂浜と林の境目の岩がゴツゴツとした場所まで歩いて座り直した。相変わらず目の前に海が広がっている。ぼんやりと眺めて、ここは何処かを考えようとした。
「お、ここにもいましたぞ」
左の方から声が聞こえてきた。聞き覚えがある声だ。
「ハカセじゃないか」
声の主は同じクラスの羽賀だ。羽賀だから、あだ名がハカセ。かけている眼鏡にヒビが入っている。その後ろから、綾瀬さんもついてきていた。彼女も同じクラスだ。
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