ポケットの中のプレゼント

2/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 きっと、こういう天真爛漫なところが男心を虜にするのだろう。 「ダメだよ、目を瞑っててくれなきゃプレゼントあげないよ? ほら、早く目を瞑って」  そんな彼女に優しく微笑みかけながら、俺はもう一度、目を瞑るよう厳しく指示を与える。 「ええ〜…気になるなあ……わかったよ。はい! 目、瞑ったよ?」  再び言われて彼女はようやく目を瞑り、まるでキスを待っているかのように背の高い俺の方へ少し上げた顔を向ける。  そんな彼女の姿に改めて覚悟を決めると、俺はポケットの中から用意したものを取り出し、折りたたまれていたそれをカチャリ…と開く。 「これが俺の気持ちだ。しっかりと受け止めてくれ……」  そして、目を瞑っている彼女の胸の前へと、そう言ってそれを躊躇いなく突き出した。 「うぐっ…!」  次の瞬間、カッと目を見開いた彼女は、口から奇妙な声とともに真っ赤な鮮血を吐き出す。 「ひっ……」  そして、胸元の痛みに視線を下ろした彼女は、そこに突き立てられた俺のプレゼント──一本の折りたたみナイフを目にして息を飲み込んだ。 「…な……なんで……」  顔面蒼白に、自らの胸より生えた黒いナイフの柄を見つめ、血の滴る真っ赤な口から掠れた声を彼女は発する。 「なんで? それは自分の痛む胸に訊いてごらんよ? 君の裏切り行為を俺が知らないとでも思ってるのかい? 君が二股どころか、何股もかけて男遊びしていたことはお見通しさ」  苦痛に歪む顔に驚きの表情をも浮かべて尋ねる彼女に、俺はその許し難き罪を親切にも教え諭してやる。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!