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俺が彫ったのは、錦鯉。 頭が肘の方で、しっぽは、手首辺りにある。 鯉は、困難に打ち勝つ力の象徴だと言われている。 彫り師として生きるなら、錦鯉と決め、自分で下絵を描き自分で墨を入れた。 それが、完成したのは、つい先日。 今は、アフターケアに入った段階。 「恭平の彫り師としての名は【きょう】この漢字じゃ」 爺さんは、そう言うと紙に【梗】と書いて、俺に渡してくれた。 「御主には、ワシがついておる。しっかり修行すれば、ワシより腕の良い彫り師になれるじゃろう」 爺さんの言葉を聞いて『なってやんよ』と答えた俺。
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