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「裕香さん、今のあなたになら、これを渡しても大丈夫みたいですね」   施設長は、そう言うと指輪を私に渡してきた。  「その指輪は、裕香さんのお母様がしていた物です。直す所は直し、そのまま保管していました。受け取ってくれますか?」 施設長の言葉を聞いた和樹が、私の腕の中から和馬を自分の腕の中に移動させた。 『施設長』と言った私の瞳から涙が溢れ出す。    「それは、裕香さんのお母様の形見。昔の裕香さんには渡せませんでした。でも、今の裕香さんなら大丈夫。あなたのお母様の形見を受け取って下さい」 何度も頷きながら、震える手で母の形見である指輪を手にした。
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