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石膏のような白い顔には、ほんのすこし赤みがさしていて、目は赤く輝いていた。瞳孔が縦に開いていたのを……覚えているわ。猫の目みたいに。
不思議な感覚だった。
身体中の毛が逆立つような恐ろしさを彼に感じながら……抱きしめてもらいたいとも思って。私は血まみれで、ただ、立ちつくしていた。
すると彼は突然、犬みたいに低く吠えると、一瞬であの女の死体に覆いかぶさったの。
彼が死体から血をすすり、その肉を食らっているのを見て、吐き気を抑えることができなかった。胃の中が空になるまで、吐いた気がする。
やがて彼はすっと優雅に立ちあがった。
振り向いたその顔は綺麗だった。
赤い目は潤み、頬にはすっかり血の気が戻っていた。唇にはケチャップみたいな色の血がベッタリついていたけど、なぜか、それ以外はほとんど汚れていなかった。
あの現場、先生は見た?
血の海よ。なのに、彼は汚れていなかった。
……もちろんなんでそんなことをしたのか聞いたわ。
でも彼は何も答えなかった。
唇についた血を蛇のような長い舌で拭うように舐めただけだった。
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