ポケットの仲

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 その後、助言通り正直に話をした青葉の面接は無事終了し、内定が決まった。そして、数ヶ月後の入社式当日。新品のスーツに身を包んだ彼が辺りを見回すも、あの日できた友人の顔は見当たらない。 「……そっか」   「次の方どうぞ」  それからさらに10年後。青葉は中途採用の面接官をしていた。 「失礼します」  入ってきたのは彼と同い年ぐらいの男性。彼の顔を見て、青葉は思わず驚きの声を上げた。 「え!ポケットさん!?」 「お久しぶりです、ブルートゥースさん!」  突然の再会に驚きながらも青葉は、履歴書を見直す。 「ホントだ!ポケットさんだ!てゆうか、本名、猪尾徹さんって言うんだ!え、今まで何を?何でまたこの会社に?」矢継ぎ早に質問をする青葉を、まあまあと困った笑顔を浮かべ両手で制した友人は、椅子にゆっくり座り一息ついてから質問に答え始めた。 「結局ここは落ちてしまったから、洋服の商品開発をしてネットに出品してたんだ」 「開発?」 「そう!これ!」そう言って立ち上がったポケットさん。よく見ると、ポケットさんはあの時の紺色のコーデュロイではなく、スーツ生地のズボンを履いていた。「ポケットの大きいスーツ!」そう言う彼の顔はとても晴れやかだった。 「でも、全然売れなくてさ」 「それはそうかも」 「あ、そうだ、これ、遅くなってごめん」そう言ってポケットさんは立ち上がり、ポケットから“面接対策ノート”を取り出した。それを見た青葉は「俺も」と言ってポケットから、小さな消しゴムを取りだした。 「わあ!持っててくれたんだ!」 「当たり前だよ、お守りなんだから。毎日ポケットに入れてるよ」 「嬉しいなあ」  10年前のあの日の休憩時間に話をしただけの二人の間には、何かより強い結びつきが生まれていた。そして、それをお互いが大切なものとしていることがお互いにわかった。   「あ、とりあえず、面接はしちゃいましょう」 「はい!面接!えっと……」途端に慌て始めるポケットさんは、返そうとしたノートを開いた。 「青葉泰地です!」 「いや、僕のノートのまんますぎ」
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