ポケットの仲

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 何列もの長机が並ぶ広い会議室の張り詰めた空気が、「そこまで」の声と共に和らいだ。  ここはとある出版社。来年度の採用試験のまっただ中であり、就活生達は買ったばかりのリクルートスーツに身を包み、その未来のための試験を受けている。  筆記試験が終了し、次の面接試験までのつかの間の休憩時間。互いにライバルである彼らの間に言葉を交わす者はない。ある者は、凝り固まった体を伸ばしたり、ある者はスマホをいじったりして、緊張からの一時の解放を、思い思いの時間を過ごしている。  そんな中、窓際の一番前の席で必死に、“面接対策ノート”と書かれた自作のノートを凝視している学生がいた。  彼の名前は、青葉泰地。  彼は既に100社以上の入社試験を受けていたが、未だ内定はゼロ。成績も人柄も決して悪くない彼が何故この様な状況なのか、周囲の大人達や友人は首を傾げていた。
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