震 告

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「えっ?」  私は足を止め、すれ違った親子に視線を送る。 「ん? なんか気になる店あった?」  美玖がそう言って声を掛けてくるが、先程見た少女の顔のせいで応えることが出来ない。 「美玖ごめん。カラオケ……また今度でもいい?」  そう言って踵を返した私は、手を繋いで歩く親子を追いかけた。少し距離を取り、改めて少女の顔を確認する。  震えている。  安原が海に潜る直前と同じくらい表情の判別が出来ない。コレがあの時と同じ死を予告するものなら、あの少女の命はあと一時間も無いだろう。  元気に歩いている所をみると、病気などで死ぬとは思えない。考えられる死の原因は、事故くらいだ。もしくは通り魔的な殺人。どちらにしても、私個人の力であの少女の運命が変えられるとは思えない。
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