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「そうそう、翔子めっちゃ可愛いのにね」
安原の言葉を援護するようにそう言った美玖は、私に新しい缶ビールを手渡してきた。
「ごめん。ちょっとトイレ」
私はそう言って腰を上げ、上陸時に女子トイレと決めた草陰に歩いていく。聴いたことの無い虫の声に囲まれながらパンツを下ろしてしゃがもうとした時、耳元で羽音が響いた。
「いたっ」
その羽音と共に右耳の奥に激痛が走り、思わず膝をつく。蜂か何かに耳の一部を刺されたのかと耳朶を触って確認するが、特に変わった様子は無い。
いつの間にか痛みも治まっており、先程までうるさく感じていた虫の声も聴こえなくなっていた。
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