震 告

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 首を傾げながら用を足し終え、先程座っていた場所に戻る。 「翔子、なんか叫んでなかった?」 「えっ、あぁ……ちょっと転びそうになって」  私がそう言って美玖に愛想笑いを返した時、斜め前に座る安原の顔が小刻みに震えているように見えた。炎から立ち昇る煙でそう見えているのかと目を擦ってみるが、安原の震えは治まらない。まるで安原の顔だけがコンピュータのバグに侵されているようだ。  私が目を細めてていると、安原は「どしたん?」と声を掛けてくる。目を丸くして言葉を返してきたように見えるが、顔全体がブレて見えるのでハッキリとした表情は分からない。  酒には強いと思っていたが、慣れない環境でいつも以上に酒が回ってしまったのだろうか。そう思いながら眉間を指で摘まむと、安原が私の背中を擦って来た。 「今日は早めに寝た方がええかもしれんな。テントまで送ろか?」 「いい。大丈夫……ごめんね」  私は安原の顔を見ないようにそう告げ、テントへ戻っていった。
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