45人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、美玖の寝相の悪さで目覚めた私がテントから出ると、安原の背中が見えた。海に向かって一人、ストレッチをしている。
「おっ、翔子大丈夫か? みんな、めっちゃ心配してたぞ」
そう言って顔だけ振り返った安原。その顔は、震えていた。心なしか、昨日よりも震えが大きくなっているようにも感じる。表情は全く分からない。まるで顔にモザイクが掛かっているように見える。
「ハハ、なんやその顔。まだ寝ぼけてるんか? ちょっと素潜りして魚ゲットしてくるわ」
安原はそう言って親指を立て、海に向かって走っていった。
まだ夢の中にいるのかと頬を抓ってみるが、痛みはしっかりと感じる。テントで眠る美玖を始めとする女子の顔を順に見ていくが、顔が震えて見える人間はいない。安原だけだ。
最初のコメントを投稿しよう!