震 告

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「なんか魚捕って来るって海に行ったらしいよ」  美玖がそう返すと同時に、「ジジイみたいに早起きやからな、あいつ」と東條が立ち上がってテントから出て伸びをする。その時、波打ち際で横たわっている影に気づく。 「ん、あれなんやろ」  東條の言葉に合わせ、私を含めた五人がその影に近づいていく。歩いている途中でその影が人間であることに気づき、その数秒後にはそれが安原であることに全員が気づいた。 「おい、やす! おい! おい!」  東條が跪いて安原の肩を揺するが、白目を剥いて口から泡を吹いている安原は微動だにしない。肩を揺することを止めた東條が安原の手首に指を添わせ、「死んでる」と小さく呟いた。  号泣する美玖や他のメンバー。  私も同じように泣きたかったが、震えていた安原の顔がハッキリ視えている事が恐ろしく、全身が金縛りにあったように停止していた。
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