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3才のアユくんの場合。
公園で遊んでいた時に転んでギャン泣き。膝を擦りむいていて一緒にいたお父さんはおろおろしてしまったという。そこにピンクのキャップを斜めに被ったポニーテールの女性がアユくんと目を合わせるようにしゃがんだ。知らない人に驚いたアユくんはもっと大声で泣こうと息を吸い込んだ。けれど、
「あや~、痛そうだねぇ……ひらりも心配しているよ」
トレーナーのポケットに手を入れると手のひらほどの切り紙の蝶が女性の手に現れた。たんぽぽ色の蝶は鮮やかで、日に当たってできる影は細かい細工でアユくんもお父さんも目を奪われた。
「格好良い……」
「でしょ」
「アユくんはカマキリさんが好きなの!」
「そっかぁ。じゃあ、そのお膝のお手当てさせてくれたら作っちゃおうかな」
「ありがたいのですが、手当てに必要な物を持っていなくて」
「問題ないよー。はい、お水のペットボトル。これで傷洗ってあげて。それから絆創膏と、ハンカチはある?」
あちらこちらのポケットからぽいぽいっと必要なものを出し終えると今度は折り紙とハサミを出してちょきちょきと黄緑色の折り紙を切っていく。アユくんが気を取られている間にお父さんは無事に手当てを終わらせた。
「はい、ちょうどカマキリさん、できましたー」
「すごい、すごい!」
アユくんはすっかり笑顔。お父さんほっと一安心。渡されたカマキリに気を取られた僅かな間にその人は消えていた。
「ちょうちょさん!」
お父さんのズボンのポケットからさっき見た蝶が顔を覗かせていてまたびっくり。ポケットさんに会えた記念にふたつの切り紙は大事に家に飾ってある。
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