匿名希望のアマネさん(仮の名前、17)の場合。

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匿名希望のアマネさん(仮の名前、17)の場合。

 外を歩くのも(こわ)いと電話インタビューになった。電話の声は(ふる)えていた。とても(おび)えているようだ。 「私、私……とても、悪いことをしていたの。今思うとなんであんなことしてたんだって」 「落ち着いて話してください。大丈夫ですか?」  アマネは電話の向こうで深呼吸を何度もしてゆっくりと話し始めた。  「私、クラスで……いじめ……してたの。暴力も()るったし、ひどい言葉も()びせた。その時、色んなことで苛々(いらいら)していたけれど理由が今となってはわからない。(むく)いだ。わかっている」  懺悔(ざんげ)するように(つむ)がれる声が何を語ろうとしているのか。風馬(ふうま)真剣(しんけん)に耳を(かたむ)ける。アマネは歯の鳴る音が()こえるほど(ふる)えているようだ。  「スーツを着た、女性だった。あなたに(わた)さなきゃいけないモノがあるって、言われて、ポケットから、写真が、私が、クラスの子に暴力振るったところとか、万引きしたところとか……いっぱい。  あれも、これもってポケットから今度はメモ用紙がっ、何時何分に私が何を言ったとか、(なぐ)ったとか、()ったとか……(ひろ)い切れないくらい、いっぱい、こ、(こわ)くなって、()げて、拾えなかったメモや写真は拾われて、親にも、学校にも、ばれて、もう(あやま)るだけじゃすまなくて。そうじゃなくても外、外に出たら、また、ポケットさんが、来るんじゃないかってっっ、ポケットさん、悪い子には怖いの、すごく、怖いの……!」  (はげ)しく泣き出す声がして泣き声に(おど)いた母親と思われる声が受話器(じゅわき)に飛びこんできた。これ以上の取材は無理だと必要以上に謝り続けてきた母親もまた()んでしまっているのかもしれない。  ……ポケットさんは実は怖い人なんだろうか。風馬はぶるっと震えた体を温めるように腕を(さす)った。
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