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可愛かった弟。
小さい頃の聡太は天使だった。五歳の時に買って貰った、合体変形するロボットの玩具で十歳まで遊んでいた。よく飽きないなと思いつつ、にこにこしながら合体と変形を繰り返す聡太の笑顔は眩かった。
公園へ連れて行くと、壊滅的な運動神経を見せてくれた。鉄棒は逆上がりどころか前回りもおぼつかず、雲梯はぶら下がった二秒後に落ち、滑り台から降りる時ですらしゅっちゅう足がもつれて転んでいた。年齢一桁台の内に、聡汰は外で遊ぶのを嫌がるようになった。
絵本を読んであげると何故かいつも無表情になった。面白く無いのかとこっちは不安になるのだけど、同じ物を繰り返しせがむので気に入ってはいるのかとおかしくなった。どうして絵本の読み聞かせの際は顔と感情が合っていなかったのか。今でもわからない。
中学生になった辺りから反抗期に入り可愛くなくなっちゃったけど、昔は天使だったな、聡太。モテるのも姉の贔屓目を抜きにしてわかる。線の細さや内面の幼さ、運動神経が壊滅しているところからも放っておけない感じが醸し出されている。だけどその結果、あいつは大人のアレを使うようになったのか。姉ちゃん、ショックだよ。ついでに言うなら私はまだ全然縁が無いから、追い抜かれたも同然だ。あーあ。
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