疑問と恐怖。

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疑問と恐怖。

 帰り道、ポケットの中から恐る恐るレシートを取り出す。家に着く前にもう一度だけ確認しよう。見間違いかも知れないから。そうして開いた紙の一番下にはやっぱりアレの名前が記されていて、胸の中が真っ暗になった。  しかし、と首を捻る。あいつ、そもそも何処でそういうことをしているのかな。彼女と二人でホテルに行くの? 高校生だと追い返されないのかな。まさか制服では行かないだろう。私服だと年齢はバレにくいかな。いや、まずホテルに入るために年齢確認ってされるの?  スマホを取りだし調べてみる。なんだ、高校生は入れないんだ。じゃあ一体何処でするのかな。候補地が、あるとしたら。  血の気が引く。またしても髪を耳にかける。自宅、か。私と聡太の部屋は隣同士だ。つまり私が推しのイラストを眺めてにやにやしている時、壁一枚を隔てて聡太は行為に及ぶのかも。防音は割とちゃんとしているけどスマホから大音量で音楽を流すとはっきり歌詞が聞き取れる程度だ。だから聡太と彼女さんが大盛り上がりをしちゃった場合、私はその状況を聞かされるわけで。  耐えきれず電柱に寄り掛かる。嫌だ。あまりに生々しい。十七年、成長を見届けてきた弟が合体している時の声なんて絶対に聞きたくない。むしろ合体変形ロボットで遊んでいてよ。十七歳にしては痛々しいけど彼女と合体されるよりよっぽどいい。  あぁ、頼むからうちには来ないで。大体、家に呼ぶなんてリスクしかない。うちは両親と私、聡太の四人家族。両親は大抵、休日は買い物だのドライブだのと出掛けているけど道が空いていたとか途中で面倒になったとか言って急に帰って来ることもある。その時、息子が彼女と大盛り上がりをしていたら両親は何を思うか。いや、そもそもインドア派の私が大抵自室かリビングにいる。姉に見付かるのも嫌だろう。うん、そうだ。だからうちに連れ込むことは流石に無いよ。聡太がいくらマイペースだとはいえそのくらいのリスク管理はするでしょ。彼女さんの家でするならいいのかと言えばそういうわけでは決してないけど、取り敢えず私にとって最悪の惨劇は回避出来そうだ。
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