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真相。
田中と綿貫と俺の三人、部屋の中央で車座になる。
「で、今のリアクションは嘘なんだろ」
田中が声を潜めてそう言った。うん、と頷きを返す。
「財布に入れるとお金が溜まる。その噂に騙されているふりをした」
「橋本は本来の用途で使うために買ったんだもんな」
「当たり前だけど家族には見付からないよう隠すよ。でも発見される可能性も大いにある。っていうか実際今姉ちゃんに見付かったし。だけど財布に入れてお金を貯めるつもりで買った、って言えば可愛い弟、ちっちゃな末っ子でいられるってわけ」
肩を竦める俺に、綿貫が顔を近付けた。
「でもお前、パーカーのポケットにレシートを入れっぱなしにしていたじゃん。隙、ありすぎだろ」
その指摘に苦笑いを浮かべる。
「完全にうっかりしていた。帰って来てすぐ姉ちゃんにパーカーを奪われたのが原因だ」
「そういう抜けてるところも、きっとお前がモテる理由なんだろうな」
あーあ、と綿貫は天井を仰いだ。
「いいなぁ。俺も彼女が欲しい。なぁ田中。彼女、欲しいよな」
田中は黙って肩を竦める。
「二人にもその内できるよ」
あまり心がこもっていないと悟られないよう、声に芯を持たせる。特に綿貫は勘が鋭いからね。
「しかし付き合っているとはいえ、高校生にそういうのはまだ早いと思うよ? いくらお前も彼女の高橋さんもオッケーでも、責任を取らなきゃならなくなる可能性はゼロじゃないんだから」
「綿貫は真面目だなぁ。そうならないためにコレを使うんだよ」
「いいや、やっぱり良くないっ。おい、田中も言ってやれよっ」
綿貫に話を振られた田中は手に持った大人のアレを無言で見詰めた。しかしおもむろにジャンパーを羽織り、ポケットへアレを突っ込むと部屋の扉へ向かった。
「お前は必要無いだろ!」
「見栄を張るんじゃない!」
俺と綿貫のツッコミに応えるかのように、ポケットから大人のアレが落っこちた。
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