ポケットに棲むトカゲ

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 睨みつけるように私を見る瑞希の視線から逃げたくなったが、ぐっと睨み返した。  理不尽な怒りを向けられるのは納得がいかない。 「僕は貧乏だが物乞いじゃない」  絞り出すように瑞希は言った。  想像していたよりずっと低く、いかにも女子な瑞希からは想像もつかなかった声だった。  怒られているのに私は嬉しかった。  瑞希が話してくれたのがうれしかった。 「話せるんじゃない」  瑞希はしまったといった顔をしていた。  口を両手で塞いでいたが、諦めたように手を下ろした。 「誰にも言わないで」  瑞希は懇願するように言った。  話せることがわかるとかなり困るらしくひどく動揺している。  さっきまで怒っていたのが嘘みたいに不安げな様子だ。 「理由を話してくれるなら」  瑞希は長く悩んでいた。  公園の時計は10時、もう1時間近く黙ったままだ。  私は瑞希が話し始めるまでじっと待ち続けた。
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