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「見て」
瑞希は短くなった長袖をまくり上げて腕を見せた。
腕は傷だらけで自分のことでもないのに、私は強い痛みを感じた。
「義父さんがやったの。母さんはもっとたくさん傷だらけ」
みんなのうわさ通り、この街に来たのは義父から逃げてるのだと瑞希は言った。
ずっと監禁に近い形で閉じ込められていたところから、母と着の身着のまま逃げてきたのだと言う。
始めて働く母さんを雇ってくれるところはほとんどなく、都会では家賃さえ稼げなかったらしい。
「あんな男に騙されて、母さんってほんとバカ」
言葉はきついが母を思う優しさが見える。
油断すると義父のもとに戻ろうとする母を遠くのここまで引っ張ってきたのだと言う。
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