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義父のことを話す瑞希の言葉には毒があった。
「呪われればいいのに」
悪どく歪んだ瑞希の顔はいつものそれではなかった。
瑞希の胸の前に黒い靄が見える。
徐々に大きくなって瑞希が飲み込まれてしまいそうで怖かった。
私は逃げだしたくなったが動けない。
「なんであんな奴が生きてるんだろう」
あと一言でも瑞希が義父のことを話せば、彼女は飲み込まれていたかもしれない。
そんなタイミングで彼はあらわれた。
胸ポケットから眠そうな目をこすりながらぴょこんと顔を出したトカゲ。
義父の着ていた服にいたトカゲの模様に似ている。
そのトカゲは黒モヤをつかんでは食べる。
モヤが消えると瑞希はいつも通りに戻っていた。
トカゲのお腹はパンパンに膨らんでいて、これ以上は食べられそうにない。
もう義父の話はさせられないと私は話をそらした。
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