マネージャーの裏の顔

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「な、何だよ……何か言いたいことがあるのか?」  思わず胸元を隠した。  もしかして私のダイナマイトボディを見て、女であることに気づいたとか!? 「いやあ〜、『全く』胸の膨らみがなかったので、師匠は男なんじゃないかとは思ってたんすよね〜」  全く……ない?  笑いながらそう答えたレオに私は強い殺気を放った。  誰が貧乳じゃああぁぁーー!  こいつ、人が気にしていることをずけずけと言いやがって……覚えてろよ。  私は怒りで震える右手を何とか抑えた。 「そんなことよりもその師匠って言うのやめてくれないか? あと、弟子にもしないからな」  そうはっきりと言い放つと、レオはシュンとした顔になった。まるで捨てられた子犬のようだ。ぐっ! その顔は……反則だろ。 「どうしてもだめっすか?」  上目遣いでこちらをじーっと見つめるレオに私は心が揺れた。  弟子にするくらいいいかもしれない。  そんな困ったことにはならないだろうし……。  はっ!  私はパンッと自分の頬を叩いた。  いかん、いかん! 惑わされるな!  ここで弟子なんかにしたら、後々困るのは私なんだ!   「すまないが、弟子をとるつもりはないんだ。他をあたってくれ」 「……そうすか」  レオはがっくりと肩を落とした。  うっ……少し強く言いすぎたかな?  でも、これくらい言わないと諦めないだろうし。 「それなら俺にも考えがあります」  気づいたらレオはいつのまにか私の右手をぎゅっと握っていた。  ん? 何してんだこいつ。  手を振り解こうとしたが、レオの力が強すぎて無理だった。  くっ、こいつ意外に力が強い!   いつもはへにゃへにゃしてるくせに! 「……離してよ」  これ、私の担当アイドルじゃなかったら通報案件だぞ。イケメンだからって何をしても許されると思ってるのか? 「嫌です。離しません」  拗ねた子どものようなレオの返事に私はあきれた。 「嫌って……んなっ!?」  レオの顔を見てたじろいだ。  とても澄んだ瞳を私に向けていたからだ。  なんて純粋な目をしているんだ……普段は死んだ魚みたいな目しかしてないのに。 「俺を弟子にしてください!」  レオは先程よりも強く私の手を握った。  うっ……期待の目が眩しい。  だが、ここで頷くわけにはいかない。 「それは無理だって言ってるだろ? 俺、断ったよな?」   「お願いします! 師匠!」 「……人の話を聞けよ」  私はレオを凝視した。  何でこんなにしつこいんだ?   レオらしくもない。金が絡んでるならわかるが、たかがゲーマーの弟子になりたいだけだろう?   一体、何が目的なんだ……。 「……弟子になるためなら俺は何でもします」  レオがボソリと不気味なことを言ったかと思えば、次の瞬間、ポロッと涙が一粒、彼の頬をつたった。
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