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私はレオを連れて、近くのファミレスに入った。
「つまり、君はもっとゲームを上手くなりたいから、弟子にしてほしいと」
私の向かい側の席に座っているレオに、真剣な表情でそう尋ねると、
「はい! 師匠!」
レオはニコッと笑い、元気よく返事をした。
誰が師匠やねん。
というか、アイドルしてるときもこれくらい愛想がよければいいのに。
鼻にティッシュを詰めているレオのまぬけ顔を眺めながらそう思った。
それにしても、まさかこんなところで会うなんて。しかも、ファミレスまで連れてきちゃったし。もしも、私の正体がバレたら……そうなった場合、結末は破滅しかない。想像しただけでもおぞましすぎる。
「俺のことより、師匠は大丈夫っすか? 顔面蒼白っすよ?」
レオは心配そうに私の顔を覗き込んできた。
うわっ! あんまり近づきすぎると私だってバレるかもしれない!
私は慌ててレオから顔を離した。
「だ、大丈夫! ちょっと考え事してただけだから!」
「そうっすか? もし、体調が悪くなったらすぐに言ってくださいね! 俺が看病するんで!」
「……ありがとう」
私はそっと目を細めた。
ああ……他人のことなんて一切気にしないレオがまさか私に気遣う言葉を掛ける日が来るなんて思いもしなかった。
どれだけゲーマーの私のことが好きなんだよ。本当に同一人物なのか?
そう疑いたくなるほど、目の前のレオは普段と態度が違いすぎる。
「ところで、その……師匠にはお聞きしたいことがあって」
モジモジしながらそう言ったレオに、私は嫌な予感がした。
「な、何を聞きたいの?」
まさか、正体がバレた!?
ダラダラと冷や汗をかいていると、レオは意外なことを聞いてきた。
「師匠は男性っすか?」
「……え?」
私は口をあんぐりと開けた。
今、男か確認された?
「す、すみません! その師匠の見た目が中性的で、どっちなのか気になって……」
私の気分を害したと勘違いしたレオが慌てて謝った。
今の私はマスクにサングラス、黒いキャップ、黒服という不審者ファッション。髪もショートなので、確かに女か男かわかりにくい格好をしている。
普段の格好で「男ですか?」なんて聞かれたら、ぶん殴っているところだが、今は勘違いされてもしかたない。
それに、これは好都合。男ということにしておいた方が私だってバレないかもしれない。
「お、男に決まってるだろ?」
声を低くし、男言葉で答えると、レオはほっとしたように笑った。
「やっぱりそうか〜よかった」
そう言って、レオは私の胸元に視線を向けた。
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