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「……え?」
呆気に取られている間に、レオの瞳からは次々と涙が溢れ出る。
「……ううっ」
しまいには子どものようにしゃくりあげ始めた。
え? あのレオが泣いてる? 何で?
予想外の出来事に目を白黒させる。
「何でいきなり泣くんだ!?」
泣かれると私が悪いみたいじゃないか。
しかも、周りの目が集まっているような気がするし……。
「……てないで」
冷や汗が止まらない私に、レオが何か呟いた。しかし、声が小さすぎて聞き取れなかった。
「何だって?」
聞き返すと、レオは涙でぐしょぐしょになった顔で懇願するようにこう言った。
「お願いだから俺を捨てないで!」
「……は!?」
突然の大声に私はピタリと固まった。
何を言ってんだこいつは!
驚きすぎて動けない私をよそに、レオは続けてこう叫んだ。
「俺のこと愛してるって言ったじゃん!」
は、はああぁぁ!? そんなこと一言も言ってませんけど!?
「ちょ、ちょっと!」
レオが大声を上げたせいで店中の視線が集まる。周囲からは「何だ?」「カップルの揉め事か?」なんて声も聞こえた。
完全に勘違いされてる。
「やめろよ……変な誤解されるだろ」
小声でそう言い、恨めがましく睨みつけると、レオは低い声のトーンで呟いた。
「じゃあ、弟子にしてください」
「だから……それは無理だって」
「ううっ、俺を捨てないでよおぉ〜」
レオは再び情けない声を出した。
こ、こいつ……こんなときだけ演技力を発揮しやがって! 何だかさっきよりも周りの視線が集まっている気がするし……、あ〜、もう!
「わかった! 弟子にするから、泣くのはやめてくれ!」
私が観念してそう言うと、レオはたちまち笑顔になった。
「ありがとうございます、師匠! そう言ってくれると思ってました!」
あまりにも嬉しそうなレオをあきれ顔で見てしまう私。
レオってこんなに執着する奴だったけ?
いつもの無気力な奴はどこに行ったんだ?
ニコニコ顔のレオとは対照的に、私の顔はサーッと青ざめていった。
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